kino's blog

東電福島第一原発事故に関する事柄を中心に、雑感などを書き残していきます。 ライター・木野龍逸(きのりゅういち)のブログです。「検証 福島原発事故記者会見2ー収束の虚妄」(http://amzn.to/YxZqdi)

国連人権理事会の特別報告者が、施策決定時の放射線量の年間基準を1mSv以下にするよう勧告する報告書を作成

国連人権理事会の特別報告者、アナンド・グローバー氏による最終報告が出ました。

 

Report of the Special Rapporteur on the right of everyone to the enjoyment of the highest attainable standard of physical and mental health, Anand Grover 

http://www.ohchr.org/Documents/HRBodies/HRCouncil/RegularSession/Session23/A-HRC-23-41-Add3_en.pdf


日本での調査は昨年11月で、日本政府にとっては極めて厳しい内容のステートメントが出てたけども、政府や行政、原子力規制委らは単なる仮の報告だとして完全に無視。最終報告書を待つとしていました。
ということで出たのが、これです。

現状報告のあと、最後に「Recommendation」として、勧告がずらっと並びます。

勧告は重要なことばかりだけども、中でも・・・

・健康管理に関する調査は年間1mSvより高い被曝を伴う地域で実施すること
・避難区域や被ばく上限は、現在の科学的知見を用い、リスクと利益の比較評価よりも人権を基本にし、また年間被曝量を1mSv以下にするように設定すること
除染は、年間1mSv以下にするまでの期間、計画を明確に定めること

この3点が非常に重要だと思います。
健康影響、除染、避難に関する基準に年間1mSvを採用したことで、放射能汚染からの救済施策の幅が非常に広がります。

とはいえ、日本政府にはこの勧告に従う法的義務はありません。
「そんなものは科学的ではない」といったり、「日本には日本の事情がある」「コミュニティが崩壊する」「コスト負担ができない」など、さまざまな理由をつけて拒絶すると思われます。

この事態を変えるため、これまでもさまざまな市民団体、議員らが動いてきました。今後はこうした活動に、国連人権委員会のお墨付きがつくことになります。
そして、それを支えるのは私たちです。具体的な行動に出るのはたいへんですが、いつも気持ちの奥に関心を持ち続け、時々発信できるような準備をしていると、物事の見方も変わると思います。

勧告は最後に、事故によって影響を受ける地域、NGOなどが政策決定に参加できるようにすることを求めています。
避難区域の決定などに関する市民の参加はもともと、政府が金科玉条にしているICRPの勧告にも明記されているものです。日本政府は、国際的な原子力ムラに所属するICRPが作成したマニュアルすら無視してきました。

政策決定への住民参加は、民主主義の基本です。
グローバー報告は、そのことを明確にしています。

福島だけでなく汚染地域を過小評価して、事故の影響がなかったことにしているような政府の施策に対抗する武器が、ひとつできたのは間違いありません。
これで少しでも、状況を変えられるといいのですが。

この報告書は今後、5月27日から国連人権委員会で報告され、関係各国、組織、NGOなどのコメント付して記録されます。内容そのものは変わらないそうです。

ちなみに他の項目では、こんなものがありました。

・健康診断の結果に簡単にアクセスできるようにすること
・希望する人が二次検査を受けられるようにすること
・作業員の放射線による健康影響をモニタリングし、必要な医療を施すこと
・東電や協力企業は事故に関する説明責任を果たし、賠償などを納税者の責に負わせないこと
・放射性物質を含んだ瓦礫の処分場所を明確にすること。
・生活再建等のためのコストを、支援策に含めること

他にもいろいろあるのですが、まずはここまでで。

(ざっと見ての翻訳なので、間違いなどあれば教えてください)